臨床検査技師が大学院に進学するメリットとは?私が修士を取得した理由を話します。
カリスマ検査技師K

こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。

大学卒業後の進路の一つである大学院は、大学で学んだ知識や理論を応用して、さらに踏み込んだ専門的な研究を行うところです。
臨床検査技師にとっての大学院も、他の理系や文系と同じように自分の学びたい専門分野を、より深く研究することが出来る場所です。
学生の方にとっては大学院への進学は、人生に影響を与えることが予想されるため、大学院の進学を悩む方が多いです。
私のSNSでもよく「大学院に進むべきかどうか」の質問が来ますし、実際に私自身も大学生の頃は進学をかなり悩みました。
この記事では、大学院進学を検討するときに皆様の役に立つ情報をお届けできるように、自分の経験や現在の状況を含めてまとめてみましたので、是非ご覧ください。

大学院進学のきっかけ


私は高校生の頃に臨床検査技師になりたいという夢を持ちました。
当時高校生の頃は、普通に大学を卒業して臨床検査技師として病院に就職するのだろうと考えていましたが、実際にはその頃のイメージとは違っていて私は大学院に進学していました。
大学生活を4年間過ごしていく中で、「大学院に進学してみたい」と思うようになった、いくつかのきっかけや考える場面がありましたので、まずはそちらから紹介したいと思います。

一番初めのきっかけ

私が大学院に進学しようと考えた、一番初めのきっかけは教授に声を掛けてもらえたことです。
大学院の進学が出来る大学ですと、教授が大学院進学を進めてきたりすることがあると聞いていましたが、まさか自分に声が掛かるなんて思ってもいませんでした。
その時は「考えてみます」と返事をしましたが、自分一人で考えても決めることが出来ず、友人や親、先輩などに相談したりもしました。
当時、既に大学院に進学している先輩と仲が良かったので、その方に大学院について色々質問した時に、良い意見がもらえたことも進学を決定した理由の一つです。

カリケン 笑顔

今でもその教授や先輩とは連絡を取っていて、たまに会ったりしています!

卒業研究に関する興味

学生が行う研究は研究室によって様々な「考え方」や「やり方」があり、学生達はその配属された研究室の方針に従って研究を進めて行かなくてはなりません。
例えば、教授が学生の意見を耳に入れず、研究の方針について全て決めてしまう場合、自分で考えて行動してみたい人にとっては、やらされていると感じる様な辛い研究となってしまうかもしれません。
私が配属された研究室の教授は、学生達の意見を聞いてくれて、私たち学生に寄り添って一緒に研究を進めさせてくれる様な方でした。
さらに大学院進学後は卒業研究の続きとして、自分の進めていた分野の研究をさせてもらえるという話をしていただいたため、これも進学を決めた理由の一つなっています。

進学しなかった時の後悔

就職か進学を考える際に、何度も頭によぎったのが「大学院というものに魅力を感じているにも関わらず、果たしてこのまま就職して、その選択で後悔はないだろうか?」という不安でした。
働きながら大学院に通うという方法も取れないことはないですが、その場合、生活がかなりハードになるという話を聞いたことがありましたので、社会人としてではなく、学生の状態で進学を優先して考えるようになりました。
「結局、進学しなかったな」という後悔を感じたくなかったというのも、私の大学院進学の一つの理由です。

カリケン 困り

今実際に働いていますが、もしもこの状態で大学院に通うとなるとやっぱり大変だなと思います。

本当に病院で働きたいのか考える時間

大学4年生の頃の私は、まだ就職先を完全に決めることができていない状態でした。
というのも、病院で働こうとは思っていたのですが、実際には心のどこかでは企業でも働いてみたいという気持ちも残っている状態で、このまま病院に就職することが自分にとって良いものなのかどうか、もう少しだけ考える時間が欲しかったのです。
2年間、周りより長く学生を続けるということは、その分先に就職していく人たちより違った経験ができたり、先に病院や企業に就職している友人にも話を聞くことができます。
また、実際に良かった経験としては社会人大学院生の方々の話を聞けたことです。
一緒に研究を進めていくため話す機会も多かったので、病院と企業との関係や、病院の良い点や悪い点など、かなり深い部分まで話を聞くことができました。
この様に、就職する前の2年間を掛けて、仕事に対しての考え方などを改めて考えさせてもらえる良い機会になると思ったことも進学した理由の一つです。

大学院進学のメリット


次に、僕が考える大学院進学のメリットについて説明していきます。
自分が経験して良かったことや、周りから聞いたことなどをまとめてみましたので参考にして下さい。

学会発表や論文投稿

大学院生になると、学部生時代と比較して発表の機会が多くなります。
研究室の方針や教授との兼ね合いもありますが、積極的に行動することで多くの発表の機会をもらうことが出来ます。
発表の回数が多くなるため、その分だけ資料を作る技術も、プレゼンのスキルも向上していきますので、挑戦できる場合はどんどん行動した方が良いと思います。
私も2年間で何度か学会発表を行っており、その度に準備や勉強やプレゼンなどをしていましたので、その分野に関する知識や技術を得て成長することが出来ました。
また、論文の投稿は将来の財産となりますので、教授の許可が下りるのであれば積極的に執筆することをおすすめします。

初任給が高い

多くの企業や大学病院では、学部卒より大学院修士卒の初任給を高く設定しています。
何個か名前を伏せて初任給を紹介していきます。

学部卒 204,000円 院卒・修士 220,000円
学部卒 219,000円 院卒・修士 242,000円
学部卒 207,000円 院卒・修士 223,000円

上記の様に学部卒と院卒では差があることがわかります。
施設にによっては給料に変わりがない場合もありますが、大手の企業になるほど院卒である方が給料が上がります。
大学卒よりも2年間長めに学校に通うことになりますが、その分少し給料が上がるので院卒のメリットと考えられますね。

カリケン どや顔

給料は高ければ高い方がいいですからね!

就職の幅が広がる

大学院を卒業することで就職先の幅が広がります。
先ほどの給料の話の様に、修士を取得していると他の面でも専門卒や大学卒よりも優遇されます。
例えば、大手企業の研究職や開発職では、院卒以上しか採用をしていない求人も見受けられます。
また、企業に限らず大学の助教や教授を目指す場合も、修士は必ず必要になります。
将来進みたい就職先が、上記の様な病院以外である場合には大学院に進むべきです。

研究職を目指せる

研究職に進みたい方にとっては、大学院への進学はかなりのメリットになると思います。
大学院に進み研究をするということは、進学先で研究する領域の専門性を高めることができます。
例えば、大学院でとある領域の研究をして、学会発表や論文執筆などで活躍されるとします。
その方は研究において知識も技術も持っている人として考えられて、その領域の研究を行っている施設からすると是非働いてもらいたい逸材となるのです。
これは知人から聞いた話ですが、教授の繋がりから研究職を紹介してもらえる場合もあり、いわゆるコネでの就活を勝ち取った方もいます。
また、先ほど話した様に、研究職ではそもそも院卒しか採用しない施設などもあります。
専門卒や大学卒の方が求人を見て「ここに就職したい!」と思った時に、院卒のみの採用しかなかった場合は、残念ながら諦めることしかできません。
修士を取得するということは、その道の研究者の始まりということであり、将来研究者として働いてみたい方にとっては必要な過程であると考えます。

カリケン 真顔

職業が研究職って響きはやっぱりかっこいいなぁと思います。

海外発表の経験

大学院へ進学することで、海外での学会発表の経験ができる可能性があります。
もちろん、あなたのやる気と研究室の方針や研究成果によって実現できるかどうか決まりますので、絶対に出来るという訳ではありませんが、「海外で一度は学会発表などの経験をしてみたい」という方にとってはチャンスだと思います。
生涯病院で働くことを決めているのであれば、その後に海外での学会発表は難しくなります。
というのも、検査技師として病院で働きながら海外での発表をする場合には、仕事で長期の休暇を取らなくてはなりません。
国内の学会発表であれば、土日で完結することがほとんどですので、二日間の休暇の中で行うことが出来ますが、海外発表となった場合はそうは行きません。
もちろん病院検査技師になってから海外での学会発表をする事が無謀という訳ではないですが、実際に病院で働きながら海外での発表をできる人はほとんどいないと思います。
時間的な余裕や教授に協力してもらえる環境などを考えると、大学院に進学した方が実現しやすい経験だと思います。
私は英語がそこまで出来るわけではありませんでしたが、多くの教授の支えもあり、その様な機会をいただく事ができました。
進学せずに病院へ就職していたら確実に経験できなかった事ですので、私にとっては大学院進学の一つのメリットであると考えています。

学生指導

私が通っていた大学の研究室では、大学院生が教授の補佐として実習準備などを行っていました。
実習準備だけでなく実際に実習へ参加して、困っている大学生への指導にも携わる、いわゆるTA(ティーチングアシスタント)という仕事がありました。
大学生の質問にいつでも返答できる様に勉強しなくてはならないため、自分自身の知識の見直しや、指導という経験により更に成長することが出来ます。
大学によってはアルバイトとして給料を貰いながらこの様な経験ができるので、大学院進学の大きなメリットと考えても良さそうです。
知り合いの大学院では、医学生に実習のやり方を教えるという経験をしている方もいました。
臨床検査技師が将来の医師に指導をすることもあるそうですので、その様な環境に進学した場合は、しっかりと前準備してから臨みたいですよね。

カリケン 困り

医学生相手に検査技師の学生が教えるなんて緊張しちゃう!

検査技師としてアルバイト

大学生卒業前に国家試験を無事に合格していれば、大学院進学の際に臨床検査技師の免許を取得していることになります。
そのため、研究の忙しさにも寄りますが、教授の理解を得ることができれば、臨床検査技師の免許を利用して病院などの施設で働くことが出来ます。
私は修士取得後に病院へ就職をしましたが、就職前にアルバイトとして採血や生理機能検査の経験を積むことが出来たので、就職後にも役に立ちました。
在学中のアルバイトは検査技師未経験での求人となり、更にアルバイトですので採用してもらえる施設は限られていると思います。
私は教授の紹介で働かせてもらうことが出来ましたのでラッキーでしたが、自分で見つけるのは少し大変かもしれません。
学会での人脈作りや、先生方とのコミュニケーションを日頃から取ることで、良い話を頂くことが出来るかもしれません。

技師長への道

あなたがいつか病院で技師長になりたいという希望があるのでしたら、修士の取得は有利になる場合があるかもしれません。
とある大学病院では技師長になるために、博士号が必要であるというのを聞いたことがあります。
この様に、出世には学歴が関係している場合もあります。
しかし、実際にその様な病院は多くはないと思いますので、病院内での実績や実力が一番重要だと思います。
仕事の能力やコミュニケーション能力、検査技師としての実力、さらには運なども関係してくると思いますので、院卒だと少しだけ有利に働く可能性もあるくらいに思っておいた方が良いかもしれません。

カリケン 企み

技師長になりたいから、大学院に進学するなんて計画的だな!!

大学院進学のデメリット


大学院進学は多くのメリットがあることを説明してきましたが、逆にデメリットもあります。
就職の面などでは大学卒や専門卒とは違う道に進むことになる可能性が高いので、デメリットも十分把握しておく必要があります。

学費について

大学院に進学する場合は学費がそれなりにかかりますので、進学の際の一つのデメリットと考えても良いでしょう。
大学進学ほど大きな額ではりませんが、大学院では国立の場合は2年間で150万円程度、私立の場合は2年間合計で200万円〜400万円程度となっています。
研究をする分野や領域についてもっと詳しくなるために、勉強に使う参考書などのを購入をする方もいます。
この様に学費以外にもお金がかかる可能性がありますので、まだ就職していない学生にはまとまったお金がないため「親への相談」「奨学金を借りる」「アルバイトができるかどうか」などの確認が必要になるかと思います。

2年間の遅れ

学部卒と比べて、大学院へ進学した人は少なくとも2年以上は社会に出るのが遅れます。
そのため、同世代と比べて社会人経験が2年遅れるというのはデメリットかもしれません。
大学院2年間で何も成長できなければ、社会人経験を2年間経験した場合と大きな差が開いてしまいます。
目的もなくただ大学生活の延長のようなイメージで大学院に進学する人も少なからずいますが、その様な人にならないために、大学院生は社会経験では得られないものを追求していく必要があります。

カリケン 真顔

適当な二年間を過ごさなに様に、目的をしっかり持って進学しましょう。

検査技師として就職しにくい

大学院への進学は就職の幅が増えたり、研究職を目指す事が出来たりと、就活の際にメリットとなることがいくつかありましたが、一般病院などで働く場合にはデメリットに働いてしまうことがあります。
大学病院の場合は研究や学会発表などに力を入れている事が多く、専門性の高い人材を欲することがあります。
しかし、そうでない病院では大学院での経験は、病院側にとってあまりメリットとはならないのです。
一般病院では研究に力を入れていないことが多く、学会発表や論文執筆をすることもありませんので、大学院で学んだことを生かす場面がほとんどありません。
ちなみに私の病院でも、研究は全くと言っていいほどしませんので、大学院での経験は生かされていません。
病院施設にも寄りますが、基本的に大学院卒の初任給は大学卒、専門卒より高く設定されていると話ましたが、初任給が高い分、人件費が高くついてしまうと考える病院からは、敬遠されるかもしれません。
就職先によっては必要でないスキルと判断されてしまい、大学卒や専門卒を中心に採用されてしまうかもしれませんので、大学院進学のデメリットと考えられます。

研究が忙しい

大学院生を忙しくさせる一番の要因は研究時間です。
1時間以内で終わる研究もありますが、研究内容によっては24時間以上掛かることもあります。
私の場合はそこまで時間の掛かる研究ではなかったので、時間的な余裕はありました。
しかし、大学院時代の同級生は毎日忙しく自分の時間が取れていないと言っていましたので、研究内容によっては辛い二年間になるかもしれません。
もちろんその分成長できるとは思いますが、、、
長時間の戦いとなるため、研究が嫌いだったり、時間に余裕が欲しい方にとってはデメリットになり得ます。

現在の私


修士を取得した後の私の状況ですが、大学院卒業後は病床数800床ほどの病院に一度就職して1年間働きました。
その後に転職して、現在200床ほどの一般病院で働いています。
先ほど話しましたが私の病院では検査科で研究を全くしていませんので、大学院での経験はほとんど生かされておりません。
しかし

「後悔はないです!」

二年間研究に打ち込んだ経験や海外での学会発表、論文執筆、学部生の指導などは本当に良い経験となりましたし、これから企業や研究職への転職を考えた際にも大学院での経験は有効に利用できると考えています。
今の職場では検査数が多いため毎日忙しいですが、学ぶことも多く楽しく働いています。
大学院卒業後は「研究職」というイメージがありますが、私のような進路もあるというを皆様にも伝えられたらと思い今回記事を書かせていただきました。

まとめ

今回は大学院進学に関して、私の経験や考え、実際に調べてみた内容をまとめてみました。
私が進学を考えたきっかけは「教授の誘い」でしたが、実際に進学を決定する際には、教授や先輩、両親など様々な方に意見を求めて行動しました。
大学院進学には多くのメリットもありますが、逆にデメリットもありますので、「自分が将来何がしたいのか」「大学院で何を学べるのか」をしっかり考えてみることが大切だと思います。
今回の記事が、実際に進学を悩んでいる学生の方の参考になれば幸いです。