臨床検査技師国家試験の第67回を解説します【午前(AM) 問46~問50】
カリスマ検査技師K

こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。

午前(AM) 問46

銀液を使用するのはどれか。2つ選べ。
1.PAS染色
2.Grimelius染色
3.Berlin blue染色
4.Masson-Fontana染色
5.methyl green-pyronin染色

答えはコチラ
2.Grimelius染色 4.Masson-Fontana染色

 

 

解説

1. PAS染色
目的:一般的な多糖類の検出
染色結果:グリコーゲンなどの多糖類―赤紫色(シッフ試薬)
線維素、膠原線維などーピンク色(シッフ試薬)
核―青紫色(ヘマトキシリン)

2. Grimelius染色
目的:内分泌細胞の染色
染色結果:内分泌顆粒―茶褐色〜黒褐色(硝酸銀
核―ピンク色(ケルンエヒトロート)

3. Berlin blue染色
目的:鉄の染色
染色結果:3価鉄イオン、ヘモジデリン、アスベスト小体―青色(ベルリン青)
核―ピンク色(ケルンエヒトロート)

4. Masson-Fontana染色
目的:メラニン色素の染色法
染色結果:メラニン顆粒、神経内分泌顆粒、リポフスチンー黒褐色(アンモニア銀
核―ピンク色(ケルンエヒトロート)

5. methyl green-pyronin染色
目的:核酸の染色法
染色結果:DNA(核)―青色〜青緑色(メチル緑)
RNA(核小体、細胞質内粗面小胞体)―赤色(ピロニン)

午前(AM) 問47

肝臓の特殊染色標本を別に示す。
染色はどれか。
1.azan 染色
2.oil red O染色
3.Victoria blue染色
4.toluidine blue染色
5.Mason trichrome染色

答えはコチラ
1.azan 染色

 

 

解説

まずは選択肢の染色法がどのようなものを染めるのか、確認しましょう。

1. azan 染色
目的:膠原線維の染色
染色結果:膠原線維、細網線維―青色(アニリン青)
筋線維、細胞質、核―赤色(アゾカルミンG)
赤血球―オレンジ色(オレンジG)

2. oil red O染色
目的:脂肪の染色
染色結果:中性脂肪―赤色(オイルレッドO)
核―青紫色(ヘマトキシリン)

3. Victoria blue染色
目的:弾性線維、HBs抗原の染色
染色結果:弾性線維、HBs抗原―青色(ビクトリア青)
核―ピンク色(ケルンエヒトロート)

4. toluidine blue染色
目的:多糖類の染色
染色結果:酸性粘液多糖類―青色(アルシアン青)
核―ピンク色(ケルンエヒトロート)

5. Mason trichrome染色
目的:膠原線維の染色
染色結果:膠原線維、細網線維―青色(アニリン青)
筋繊維、細胞質―赤色(ポンソー・キシリジン/酸性フクシン/アゾフロキシン)
核―黒褐色(ワイゲルトの鉄ヘマトキシリン)
赤血球―オレンジ色(オレンジG)

設問の画像を見ていきましょう。
画像の組織は肝臓です。
肝臓には細網線維が多く存在する臓器ですね。
画像から細網線維が青色に染色されていることがわかります。
したがってこの時点で、選択肢はazan染色とMason trichrome染色に絞られます。
どちらも細網線維をアニリン青で染色します。
最後に核を見ていきましょう。
核は赤色に染色されていますね。
つまり、核がアゾカルミンGで染色されるazan染色が答えとなります。

午前(AM) 問48

酵素抗体法について正しいのはどれか。
1.凍結切片では行わない。
2.ポリマー法は感度が高い。
3.加熱処理後は急速に冷却する。
4.一次抗体と二次抗体を混和する。
5.内因性ペルオキシダーゼの除去は発色後に行う。

答えはコチラ
2.ポリマー法は感度が高い。

 

 

解説

1. 凍結切片で行うことができる。
凍結切片ではホルマリン固定などを行わずに薄切された標本であるため、抗原性が保たれやすく、酵素抗体法に向いているといえます。
現在では、抗原性賦活化法や高感度検出法の開発・普及により、凍結標本でしか検出できないとされてきた多くの抗原を、ホルマリン固定パラフィン切片上で証明できるようになりました。

2. ポリマー法は感度が高い。
ポリマー法とはポリマー試薬を用いる高感度法であり、アビジン・ビオチンを利用する方法以上に高感度、かつ内因性ビオチンによる非特異反応を伴わないことが特徴です。

3. 加熱処理後は急速に冷却しない。
抗原性を賦活化させる方法の一つとして加熱処理があります。
加熱方法としては電子レンジ法、オートクレーブ法、圧力鍋法、温浴槽法などがあります。
加熱処理後に急速に冷却してしまうと逆に抗原性の減弱が起こることがあります。

4. 一次抗体と二次抗体は混和せず、別々に使用する。
目的抗原に対する特異抗体である一次抗体を反応させた後に、酵素や蛍光色素を標識した二次抗体を反応させます。

5. 内因性ペルオキシダーゼの除去は発色前に行う
標識酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いる場合、内因性ペルオキシダーゼ活性(特に好酸球に強い)や偽ペルオキシダーゼ活性(赤血球ヘモグロビンが持つ)をあらかじめ除去しておかないと、抗原抗体反応による特異的発色産物を判断しにくくなります。
内因性ペルオキシダーゼをブロックするには、0.3%過酸化水素加メタノール、3%過酸化水素水、1%過ヨウ素酸水溶液といった処理方法があります。
この処理に用いる溶液も国家試験で出題されたことがあるため、一緒に覚えておきましょう。

午前(AM) 問49

H-E 染色標本を別に示す。
この臓器はどれか。
1.下垂体
2.唾液腺
3.甲状腺
4.膵臓
5.副腎

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3.甲状腺

 

 

解説

画像を見ると赤紫色に染まる無構造物を取り囲んでいる濾胞構造が多数見られますね。
これは甲状腺に特徴的な組織像です。
甲状腺は大小多数の濾胞の集合であり、中にはコロイドを豊富に含んでいます。
コロイドを構成しているサイログロブリンは濾胞上皮細胞から分泌されます。
また、濾胞上皮の基底側には傍濾胞細胞(C細胞)と呼ばれる別の内分泌細胞が存在し、カルシトニンを分泌することも覚えておきましょう。

午前(AM) 問50

圧迫萎縮を示すのはどれか。
1.閉経後の骨粗鬆症
2.成人における胸腺萎縮
3.長期臥床による骨格筋萎縮
4.水腎症における腎実質の菲薄化
5.末期癌における脂肪組織の萎縮

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4.水腎症における腎実質の菲薄化

 

 

解説

一度正常の大きさまで発育した組織や臓器の容積が、何らかの原因により縮小することを「萎縮」といいます。

1. 閉経後の骨粗鬆症
骨粗鬆症は骨基質が強度に減少した状態です。
X線像で骨皮質は菲薄化し、骨密度は低下しています。
女性ホルモンであるエストロゲンは破骨細胞と骨芽細胞の両方に作用していますが、閉経によりエストロゲンが欠乏すると、破骨細胞による骨吸収が亢進して、骨量が減少すると考えられています。

2. 成人における胸腺萎縮
胸腺は歳を経るごとに萎縮していきますが、これは生理的変化によるものです。

3. 長期臥床による骨格筋萎縮
長い間身体を動かしていないと、筋肉が衰え、骨格筋が萎縮してしまいます。
これは廃用性萎縮といい、細胞の代謝活動や機能が様々な原因で停止することで細胞の形態が保持できなくなり生じます。

4. 水腎症における腎実質の菲薄化
水腎症とは腎臓で作られた尿の流れがせき止められて、尿道や腎臓の中に尿が溜まって拡張した状態をいいます。
水分が溜まって圧迫され、腎実質が菲薄するため、圧迫萎縮といえます。

5. 末期癌における脂肪組織の萎縮
腫瘍細胞はエネルギー代謝が激しいため、脂肪組織を分解してエネルギーを補給し、その結果脂肪組織が萎縮してしまいます。

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