臨床検査技師国家試験の第67回を解説します【午前(AM) 問41~問45】
カリスマ検査技師K

こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。

午前(AM) 問41

核酸を含まない細胞内小器官はどれか。
1.核小体
2.粗面小胞体
3.リボソーム
4.ミトコンドリア
5.ゴルジ(Golgi)装置

答えはコチラ
5.ゴルジ(Golgi)装置

 

 

解説

核酸とはDNAとRNAの総称です。これらのうちどちらかを含むもの以外を選択する必要があります。

1.核小体
核小体とは核の中に1個または数個存在する小器官で、主に蛋白質とRNAからなります。
ここではリボソームRNAの転写・修飾が行われます。

2.粗面小胞体 3.リボソーム
リボソームとは数本のRNA分子と50種類ほどの蛋白質からなる巨大なRNA・蛋白複合体です。
mRNAを翻訳して蛋白質を作り出します。
また、粗面小胞体とはこのリボソームを表面に付着させた小胞体のことで、蛋白合成の場として重要です。
したがって粗面小胞体とリボソームには核酸が存在するといえます。


出典:「マルチメディア資料館」
https://www.nig.ac.jp/museum/dataroom/translation/01_introduction/index.html

4.ミトコンドリア
ミトコンドリアはマトリックス中に小型の閉環状DNAや翻訳に必要なRNAを持ちます。
また、細胞が行うような無系分裂と似た形式で分裂し、増殖することから、ミトコンドリアは地球上での生命誕生後まもなく、大型の嫌気性菌に共生した好気性菌に由来する小器官であると考えられています。
ちなみにミトコンドリアはATPを産生し、細胞にエネルギーを供給するという非常に重要な役割を持ちますね。


出典:「Nebula genomics」
https://nebula.org/blog/ja/祖先-y-染色体-ミトコンドリア-dna/

5.ゴルジ(Golgi)装置
ゴルジ装置は分泌蛋白の濃縮、糖鎖の付加・修飾、分泌顆粒形成を行います。特にDNAやRNAをもつわけではないため、ゴルジ装置が答えとなります。

午前(AM) 問42

逸脱酵素でないのはどれか。
1.CK
2.LD
3.ALT
4.AST
5.ChE

答えはコチラ
5.ChE

 

 

解説

逸脱酵素とは、本来は細胞質に存在する酵素が、その細胞の損傷や炎症などによってその細胞質から血中へ流出したものを指します。
主に1. CK、2. LD、3. ALT、4. ASTなどが含まれ、組織の障害によって血中濃度が上昇します。
5. ChEは肝臓で合成される蛋白質で、肝臓の蛋白合成能や栄養状態を判定し、肝機能障害や低栄養で低値になります。

午前(AM) 問43

ビタミンDの25位を水酸化する臓器はどれか。
1.肺
2.肝臓
3.胸腺
4.腎臓
5.副甲状腺

答えはコチラ
2.肝臓

 

 

解説

ビタミンDは食物から摂取するか、皮膚で合成されて生体内に供給されます。
まず肝臓で25位が水酸化されて25-ヒドロキシビタミンDになり、さらに腎臓で1α位が水酸化を受けて活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDとなります。
この活性型ビタミンDは小腸や腎尿細管でのカルシウムとリンの吸収を促進したり、副甲状腺に働きかけてPTH(副甲状腺刺激ホルモン)の分泌を抑制します。
つまり、ビタミンDは血中カルシウム濃度を増やす働きがあるということです。
ちなみにビタミンD欠乏症は「なんかくるで〜」で覚えましたね(骨軟化症、くる病、ビタミンD)。
他にも骨粗鬆症を発症させたりと、カルシウム濃度が低くなることにより起こる骨病変を引き起こしてしまいます。
ビタミンのゴロはこちら

午前(AM) 問44

カルシウムイオン50 mg/dLは何 mEq/Lか。
ただし、カルシウム原子量は40とする。
1.  0.25
2.  1.25
3.  2.50
4.  12.5
5.  25.0

答えはコチラ
5.  25.0

 

 

解説

1 mEq/Lとは電子1 mmolの電荷と等しい電荷を持つイオン量のことです。
1価のイオン量(Eq)はモル数と等しくなります。
つまり2価の陽イオンであるカルシウムイオン(Ca2+)の場合、イオン量(Eq)は2倍となります。
まずはモル数から求めていきましょう。

ここで単位に注意です。
原子量は40 g/molですので、カルシウムイオン濃度の50 mg/dLを0.05 g/dLに直します。

0.05 g/dL ÷ 40 g/mol = 0.00125 mol/dL

1mEq/Lは電子1 mmolの電荷と等しいためmolはmmolに直します。
= 1.25 mmol/dL

次にdLをLに直しましょう。
= 12.5 mmol/L

最後にカルシウムイオンは2価の陽イオンであるため、この値に2をかけるのを忘れずに。
= 25 mmol/L
= 25 mEq/L

午前(AM) 問45

パラフィン切片の伸展について正しいのはどれか。
1.気泡の発生を防ぐ。
2.切片を乾燥させてから行う。
3.切片の傷を修復するために行う。
4.小さな切片では伸展の必要がない。
5.パラフィンの融点と同じ温度で行う。

答えはコチラ
1.気泡の発生を防ぐ。

 

 

解説

1. 気泡の発生を防ぐ。
パラフィン伸展時に気泡が入ってしまうと凸凹な組織標本となってしまい、観察が困難になってしまいます。
伸展させたあとにスライドガラスを勢いよく振ったり、スライドガラス立てに斜めに立てかけたり、伸展器自体を傾けたりして、スライドガラスと切片との間の水分を除去することがポイントです。水分が残ったまま伸展器上で放置すると、気泡が生じやすくなります。

2. 切片を伸展させたあと乾燥する。
濡れた状態のまま伸展を行ったあと、切片を乾燥させます。
約60℃のパラフィン溶融器内で1時間ほど、または37℃の恒温器に一晩入れて、乾燥させます。

3. 切片をスライドガラスに貼り付けるために行う。
伸展の目的はスライドガラス上に切片を貼り付けるために行います。切片のシワは拾い上げる前に伸ばしておくことができますが、傷が入ってしまっていた場合、修復することはできません。

4. 小さな切片でも伸展させる必要がある。
切片の大きさが小さくても伸展の必要はあります。

5. パラフィンの融点より10〜15℃低い温度で行う。
パラフィンの融点と同じ温度くらい高くしてしまうと、パラフィンが溶けてしまったり、組織が広がってしまったり、気泡が生じたりします。
逆に伸展温度が低いと伸展不十分になり、シワが生じます。

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