こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。
午前(AM) 問51
2.腹水
3.肝腫大
4.食道静脈瘤
5.女性化乳房
解説
肝硬変はHBVやHCVなどの肝炎ウイルスやアルコール性など代謝障害により起こります。
肝硬変症の症状は国試でよく出るため、その機序とともにしっかり覚えていきましょう。
肝硬変の病態は大きく肝機能低下と門脈圧亢進の2つに分けられます。
肝機能低下
肝細胞壊死により機能的肝細胞量が著減し、合成能・代謝能がともに低下します。
合成能低下:アルブミンや血液凝固因子が減少し、その結果浮腫や腹水、出血傾向などの症状が現れます。
代謝能の低下:脂質代謝障害、ビリルビン代謝障害、ホルモン代謝障害、薬物代謝障害により、黄疸(ビリルビン代謝障害による)、肝性脳症(アンモニア代謝障害による)、クモ状血管腫・手掌紅斑・女性化乳房(エストロゲン過剰による)などの症状が現れます。
門脈圧亢進
門脈とは消化管から肝臓へつながる血管のことですね。
この門脈が肝硬変により詰まってしまうことで門脈圧が亢進してしまいます。
すると別の血管を通ろうと側副血行路が症じます。
しかし側副血行路は血管が狭く、万能ではないため、食道や胃の静脈で逆流が生じたり(食道・胃静脈瘤)、血液の鬱滞により脾腫や腹壁静脈の怒張、腹水などがみられるようになります。
肝臓には代償作用があり、多少障害されていても機能を保つことができます。そのため、このような症状がみられる頃にはかなり末期の肝硬変に陥ってしまっているといえます。
肝硬変では肝細胞の壊死により肝臓が萎縮するため、3.肝腫大が誤りといえます。
午前(AM) 問52
2.コロイド
3.セロイド
4.ヘモジデリン
5.リポフスチン
解説
toluidine blue染色とは、酸性粘液多糖類や糖蛋白の酸性粘液、アミロイドの検出に役立つ特殊染色で、これらがトルイジン青本来の色調とは異なった染色性を示す(メタクロマジー)を利用したものです。
出典:「株式会社薬研社」
https://www.yakukensha.co.jp/jtk/det.php?i=1289
こちらの画像はアミロイドではないですが、骨の軟骨部分がメタクロマジーによって赤紫色に染色されていることがわかります。
2.コロイドは甲状腺の濾胞内に存在しているサイログロブリンに富んだ物質で、HE染色でエオジンに好染します。
3.セロイドとは脂質性の色素と考えられており、ズダンⅢ染色、PAS反応、チール・ネルゼン染色などによって証明できます。
4.ヘモジデリンは溶血性疾患などによってヘモグロビンが破壊され、過剰な鉄が細網組織で処理しきれなくなった場合に臓器に沈着する3価の鉄イオンのことです。
ベルリン青染色などで青色に染まります。
5.リポフスチンは生体内色素の一つで、消耗性色素、老化色素とも呼ばれます。
黄褐色顆粒状の色素で、心筋や肝臓、老化脳の神経細胞などの細胞中に認められます。
HE染色でも黄褐色状の顆粒として見られ、鑑別は可能です。
午前(AM) 問53
2.潰瘍性大腸炎
3.偽膜性腸炎
4.虚血性大腸炎
5.クローン(Crohn)病
解説
1. アメーバ大腸炎
アメーバ大腸炎は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)が大腸粘膜へ感染することにより発症します。
特徴的な内視鏡像として、アフタ・びらん、境界明瞭な潰瘍、白苔、たこいぼ状変化などがあり、また病変が回盲末端に認められないことも重要です。
ちなみに赤痢アメーバはPAS反応で強陽性に染色されます。
2. 潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とは主に大腸粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性炎症性疾患です。
直腸から連続性・びまん性に血管透見像の消失、偽ポリポーシス、ハウストラ(結腸膨起)の消失などの病変を認めます。
3. 偽膜性腸炎
偽膜性大腸炎は抗菌薬の使用により菌交代現象が引き起こされ、嫌気性菌であるClostridioides difficile が大量に増殖し、産生される毒素(CD毒素)により大腸の粘膜が侵される疾患です。
内視鏡検査で黄白色の偽膜を認めます。
4. 虚血性大腸炎
虚血性大腸炎とは大腸の小血管領域の血流障害に伴い、大腸粘膜に限局性の虚血性変化をきたす疾患です。
突然の腹痛、それに続く下痢、下血が見られ、多くは左側結腸に生じます。
5. クローン(Crohn)病
クローン病とは若年者に好発する原因不明の肉芽腫性炎症性疾患です。
肉芽腫とは腫大して上皮様細胞となった組織球の集簇巣のことで、クローン病では壊死を認めない非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が、腸壁全層に分布します。
腸結核とは乾酪壊死を認めないことで鑑別することができます。
また病変が非連続性・区域性(skip lesion)にみられることで潰瘍性大腸炎と鑑別することができます。
午前(AM) 問54
2.中性脱灰液には炭酸ガスが発生する。
3.EDTA脱灰法は抗原性の保持が悪い。
4.振盪器を用いると脱灰時間が短縮される。
5.プランク・リクロ(Plank-Rychlo)法は40℃で行う。
解説
骨や歯などの硬組織、石灰化した病巣などは、そのまま包埋すると薄切が困難となるため、石灰をあらかじめ除去する必要があります。
この操作のことを脱灰といいます。
1.脱脂操作後に行う。
脂肪が存在すると脱灰液が組織内に浸透しにくいため、脂肪に富む組織片を脱灰する場合は、脱灰前に脱脂を十分に行います。
2.酸性脱灰液には炭酸ガスが発生する。
脱灰液には無機酸(塩酸、硝酸)や有機酸(ギ酸、トリクロロ酢酸)を用いる酸性脱灰液と中性脱灰液(EDTA液)に大別されます。
酸性脱灰液を使用する場合は、炭酸ガスが発生するため、容器は密栓しないようにする必要があります。
3.EDTA脱灰法は抗原性の保持が良い。
EDTA液は中性溶液であり、脱灰速度が極めて遅いですが、組織障害が少なく染色性に優れています。
そのため、免疫組織化学染色や電子顕微鏡的検索を目的とした場合に用いられます。
4.振盪器を用いると脱灰時間が短縮される。
脱灰時間を短縮する方法の一つとして振盪させることが挙げられます。
他に撹拌、超音波やマイクロ波の照射などによって脱灰時間を短縮することができます。
5.プランク・リクロ(Plank-Rychlo)法は4℃で行う。
プランク・リクロ液は無機酸と有機酸の混合脱灰液で、組織膨化を抑制するために塩化アルミニウムが含まれています。
脱灰速度が極めて速いのですが、それゆえに過脱灰による染色性低下が生じやすくなってしまいます。
そのため、4℃で緩やかに脱灰する低温脱灰法が推奨されています。
この方法では脱灰に多少時間を要しますが、染色性への影響はほとんど認められません。
午前(AM) 問55
出現している細胞はどれか。
2.気管支上皮細胞
3.腺癌細胞
4.小細胞癌細胞
5.扁平上皮癌細胞
解説
画像を見てみると比較的小型の細胞で細胞質がほとんど見えない細胞が塊を形成して出現しています。
また核同士はくっついていて木目込み状に見られます。これらの特徴から小細胞癌であると推測できます。
以下に小細胞癌の特徴についてまとめました。
壊死性背景
小型(成熟リンパ球の3倍を超えない程度)
裸核状(細胞質がほとんど見えない)
核の圧排像(数珠状、木目込み状配列)
濃染した核
1.肺胞組織球
肺胞の組織球は黒い炭粉を食べ込んでいる像が特徴的で、dust cellとも呼ばれています。
泡沫状の細胞質を持っており、核は偏在傾向にあります。
また、血球のため結合性は認められません。
出典:「第65回臨床検査技師国家試験問題 午後 問題 別冊」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07b_02.pdf
2.気管支上皮細胞
気管支上皮細胞は線毛円柱上皮であるため、線毛がみられることが特徴です。
また腺細胞であるため、柵状配列がみられます。
変性のため核が少し悪性のように見えてしまうことがありますが、線毛があれば良性です。
間違えないようにしましょう。
ちなみにこの画像の上側に細胞質がピンク色に染まっている細胞がありますね。
これは杯細胞で粘液を産生するため、エオジンに淡染します。気管支の線毛円柱上皮と一緒にみられることが多いです。
出典: 「第66回臨床検査技師国家試験問題 午後 問題 別冊」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp200414-07b_02.pdf
3 腺癌細胞
腺癌細胞は核が偏在し、泡沫状の細胞質を持つ細胞が放射状に並んで見られます。
線毛がみられず、核が腫大、クロマチンの増加、核小体の明瞭化などの悪性所見がみられたら、腺癌細胞を疑いましょう。
出典:「第65回臨床検査技師国家試験問題 午前 問題 別冊」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp190415-07a_02.pdf
5.扁平上皮癌細胞
扁平上皮癌細胞は核が中心性で角化してオレンジGに強染した厚ぼったい細胞質が特徴です。
背景には壊死物質が多くあり、汚い印象を受けます。
細胞質や核が変な形になっていたり、クロマチンが増量して真っ黒になっている場合は扁平上皮癌を疑いましょう。
出典:「第64回臨床検査技師国家試験問題 午後 問題 別冊」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp180511-07b_02.pdf
今回の選択肢に挙げられた細胞は過去にも出題されているため、この機会に全て覚えておきましょう。
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