臨床検査技師国家試験の第67回を解説します【午前(AM) 問71~問75】
カリスマ検査技師K

こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。

午前(AM) 問71

芽胞を有するのはどれか。
1.Acinetobacter baumannii
2.Clostridioides difficile
3.Escherichia coli
4.Haemophilus influenzae
5.Klebsiella pneumoniae

答えはコチラ
2.Clostridioides difficile

 

 

解説

芽胞とは?

細菌細胞内部に形成される極めて耐久性の高い細胞構造です。
栄養や温度などの環境が悪い状況に置かれた際に一部の細菌が芽胞を形成します。
アルコールや100℃での消毒でも不活化できず、死滅にはオートクレーブもしくは次亜塩素酸で処理する必要があります。

芽胞を持つ細菌
Clostridium 属菌
Bacillus属菌

1. Acinetobacter baumannii
ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌です。
偏性好気性菌であるため、芽胞は持っていません。

2. Clostridioides difficile
Clostridium属菌は芽胞を形成する唯一の嫌気性菌です。
設問のClostridioides difficileは2017年度からClostridium 属から再分類され、名前が若干異なりますが、ほぼ同じ属菌と思ってもらって大丈夫です。
他に
☛C. botulinum
☛C. tetani
☛C. perfringens
があります。
いずれも強力な毒素を産生するため重要な菌です。

3. Escherichia coli
腸内細菌科細菌の代表とも言える大腸菌は通性嫌気性グラム陰性桿菌で、芽胞は持っていません。
周毛性の鞭毛と線毛を持っていることが特徴です。

4. Haemophilus influenzae
通性嫌気性グラム陰性球桿菌で、芽胞は持っていません。
莢膜を持つものがあります。

5. Klebsiella pneumoniae
腸内細菌科細菌に分類され、芽胞は持っていません。
運動性がないことが特徴です。

午前(AM) 問72

血中濃度モニタリングが必要な抗菌薬はどれか。
1.ペニシリンG
2.バンコマイシン
3.エリスロマイシン
4.テトラサイクリン
5.レボフロキサシン

答えはコチラ
2.バンコマイシン

 

 

解説

血中薬物濃度モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring ; TDM)の対象となる薬物の特徴

薬物血中濃度と臨床効果との間に密接な関係がある
治療上有効な血中濃度範囲が狭い
体内動態の個体差が大きい
肝疾患や腎疾患などによって代謝排泄が大きく影響される
体内動態が薬物関相互作用の影響を大きく受ける

つまり、投与量を少しでも間違えると毒にもなってしまう危険な薬なため、常に見張っている必要があるということですね。

選択肢の中では2バンコマイシンのみTDMを必要とします。

抗菌薬の中でTDMを必要とする薬剤

グリコペプチド系(バンコマイシン、テイコプラニン)
アミノグリコシド系(アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アルベカシン)

午前(AM) 問73

消毒用エタノールに抵抗性を示すのはどれか。2つ選べ。
1.ノロウイルス
2.Candida albicans
3.Clostridioides difficile
4.Pseudomonas aeruginosa
5.Staphylococcus aureus

答えはコチラ
1.ノロウイルス 3.Clostridioides difficile

 

 

解説

エタノールの特徴

・中水準消毒薬
・消毒対象微生物:一般細菌、緑膿菌、MRSA、結核菌、真菌、ウイルス(エンベロープあり)
・耐性菌:芽胞菌、ウイルス(エンベロープなし)

 

1 ノロウイルスはエンベロープがないため、消毒用エタノールが効きません。消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使用します。

3 Clostridioides difficile は問71でも出題された芽胞形成菌です。こちらも消毒には次亜塩素酸ナトリウムを用います。

午前(AM) 問74

ワクチンが開発されていないウイルスはどれか。
1.風疹ウイルス
2.麻疹ウイルス
3.C型肝炎ウイルス
4.水痘・帯状疱疹ウイルス
5.インフルエンザウイルス

答えはコチラ
3.C型肝炎ウイルス

 

 

解説

3.C型肝炎ウイルスに対する有効なワクチンは開発されていません
B型肝炎ウイルスと同様血液を介して感染するため、予防は血液の付くものの使い回しを回避するなど、血液の曝露を避けるしかありません。

1.2の風疹ウイルスと麻疹ウイルスに対してはMR(麻疹風疹混合)ワクチンが開発されており、1歳代と小学校入学前の2度に渡り予防接種することが推奨されています。
MRワクチンは代表的な生ワクチンの1つでもあるため、覚えておきましょう。

4.水痘・帯状疱疹ウイルスに対しては水痘ワクチンが開発されており、1歳代で2度接種することが推奨されています。
こちらも代表的な生ワクチンの1つです。

5.インフルエンザウイルスに対するワクチンはインフルエンザワクチンが開発されています。インフルエンザウイルスはRNAウイルスであり、その構造が変化しやすいため、毎年流行時期の前に2度接種を完了させておく必要があります。
こちらは不活化ワクチンです。

午前(AM) 問75

消毒用エタノールに抵抗性を示すのはどれか。2つ選べ。
1.Bacillus属―Hiss法
2.Cryptococcus属―Leifson法
3.Klebsiella属―Wirtz法
4.Nocardia属―Kinyoun法
5.Trichophyton属―Neisser法

答えはコチラ
4.Nocardia属―Kinyoun法

 

 

解説

1. Bacillus属―Wirtz法、Moller法

Bacillus属は芽胞形成菌でしたね。
芽胞の染色にはWirtz(ウィルツ)法やMoller(メラー)法があります。

2. Cryptococcus属―Hiss法
Cryptococcus属は菌体周囲に厚い莢膜を形成することが特徴的な真菌です。
Hiss法で莢膜を染色することができます。
また、墨汁染色では莢膜により墨汁をはじくため、染色されない部分を莢膜として確認することができます。

3. Klebsiella属―Wirtz
Klebsiella属は腸内細菌科細菌の中で数少ない鞭毛を持たないことが特徴です。特殊染色はありません。
Wirtz法は芽胞の染色法でしたね。

4. Nocardia属―Kinyoun法
Kinyoun法とは抗酸菌を染色する方法で、Ziehl-Neelsen染色と類似しますが、色素の濃度や加温染色しないで実施できる点で異なっています。
Nocardia属はグラム陽性好気性放線菌で、Kinyoun法で陽性となります。
同じ放線菌であるアクチノマイセスとはKinyoun法で鑑別することができます。

5. Trichophyton属―Grocott染色
Trichophyton属は皮膚糸状菌の1つで白癬を引き起こします。真菌なのでGrocott染色などで染色できます。
Neisser法は細菌の菌体顆粒である異染小体の染色に用いられます。異染小体はCorynebacterium diphtheriaeなどのCorynebacterium属の一部の菌種が保有するDNAからなる顆粒です。

 

 

【臨床検査技師のたまご塾オンライン】の紹介

この塾では臨床検査技師のたまご達が国家試験の勉強や就活、病院実習などに関する様々な情報を共有して、参加者全員が一緒に成長することを目指す場となっております。
私自身が「学生の頃にこんな場所があったらよかったのに」と思えるような塾を目指して、日々運営しております。
検査学生の方や、国家試験浪人生の方々のご参加心よりお待ちしております。
詳しくは以下のリンクをご覧ください。