臨床検査技師国家試験の第67回を解説します【午前(AM) 問56~問60】
カリスマ検査技師K

こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。

午前(AM) 問56

炎症の四主徴に含まれないのはどれか。
1.潰瘍
2.腫脹
3.疼痛
4.発熱
5.発赤

答えはコチラ
1.潰瘍

 

 

解説

炎症の四主徴とは
炎症過程の局所反応で起こる特徴的な組織変化・自覚的症状のことです。

炎症の四主徴

・発赤
・腫脹
・熱感
・疼痛

炎症の四主徴のメカニズム
何らかの理由で組織が傷害されるとマクロファージやマスト細胞などによってサイトカインやケミカルメディエーターが産生され、血管透過性亢進血流量増加につながります。
血管透過性が亢進すると、血漿成分が浸出し、腫脹・疼痛が起こります。
血流量が増加すると、熱感・発赤が起こります。
このような反応を通じて傷害因子を排除したり、組織を修復したりすることを炎症と呼びます。

 

午前(AM) 問57

我が国において最も頻度の高い悪性リンパ腫はどれか。
1.濾胞性リンパ腫
2.Burkittリンパ腫
3.Hodgkinリンパ腫
4.マントル細胞リンパ腫
5.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

答えはコチラ
5.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

 

 

解説

悪性リンパ腫の日本での発症割合は以下のグラフの通りになっています。


出典:「オンコロ」https://oncolo.jp/news/160401k01

したがって答えは5 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫といえます。

  1. 濾胞性リンパ腫(follicular lymphomaFL

t(14;18)によるBCL2蛋白の異常発現が見られる濾胞中心細胞由来の腫瘍です。
BCL2にはアポトーシスを抑制する作用があり、増殖を止められなくなります。頻度は18%と比較的高いです。

 

  1. Burkittリンパ腫(BL

頻度は0.9%ほどと低いですが、予後が大変不良でなことで有名です。

Burkittリンパ腫で覚えておきたいことは

t(8;14)によるMYC遺伝子(細胞周期の進行)の発現

EBウイルスが関与している

・腫瘍細胞のびまん性増殖の中にマクロファージが多数見られる(starry sky

です。これらは過去にも出題されたことがあるので、一緒に覚えておきましょう。

 
1.濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma;FL)
t(14;18)によるBCL2蛋白の異常発現が見られる濾胞中心細胞由来の腫瘍です。
BCL2にはアポトーシスを抑制する作用があり、増殖を止められなくなります。
頻度は18%と比較的高いです。

2.Burkittリンパ腫(BL)
頻度は0.9%ほどと低いですが、予後が大変不良でなことで有名です。
Burkittリンパ腫で覚えておきたいことは
t(8;14)によるMYC遺伝子(細胞周期の進行)の発現
EBウイルスが関与している
・腫瘍細胞のびまん性増殖の中にマクロファージが多数見られる(starry sky像
です。これらは過去にも出題されたことがあるので、一緒に覚えておきましょう。

3.Hodgkinリンパ腫(HL)
Hodgkinリンパ腫はHodgikin細胞Reed-Sternberg細胞といった特徴的なB細胞由来の細胞が出現することかは他のリンパ系腫瘍と区別されています。
頻度は7%程と低いです。

4.マントル細胞リンパ腫(mantle-cell lymphoma:MCL)
t(11;14)によるCyclinD1(細胞周期の進行)の過剰発現が見られます。
頻度は3%程です。
似た名前でMALTリンパ腫があるので混ざって覚えてしまわないようにしましょう。
マントル細胞リンパ腫はリンパ節に見られますが、MALTリンパ腫は胃や小腸などの消化管に好発します。

5.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma;DLBCL)
発熱、盗汗、体重減少などの臨床症状が見られ、50%はリンパ節、50%は節外性で消化管に多いです。
頻度は33%と最も多くなっています。

午前(AM) 問58

神経組織の染色に用いないのはどれか。
1.Bodian染色
2.Kluver-Barrera染色
3.Nissl染色
4.orcein染色
5.PTAH染色

答えはコチラ
4.orcein染色

 

 

解説

1.Bodian染色
神経原線維を染める染色法です。また、染色液にプロテイン銀液が使われることもよく問われるので覚えておきましょう。
染色結果
神経原線維、軸索、樹状突起、神経終末―赤褐色〜黒褐色(プロテイン銀)

2.Kluver-Barrera染色
同一切片内で髄鞘とニッスル小体(神経細胞の粗面小胞体)を染め分ける染色法で、ニッスル染色とルクソール・ファースト青染色の二重染色法です。
染色結果
髄鞘―青色(ルクソール・ファースト青液)
ニッスル小体、核―紫色(クレシル紫)

3.Nissl染色
神経細胞の粗面小胞体であるニッスル小体を染める染色法です。
染色結果
ニッスル小体、核―紫色(クレシル紫)
※教科書にはcresyl violet染色として記載されています。

4.orcein染色
元々は弾性線維を染める染色法として用いられていましたが、現在ではHBs抗原の染色法として用いられています。
染色結果
HBs抗原、弾性線維―茶褐色(オルセイン液)
核―青紫色(ヘマトキシリン液)
orcein染色は神経組織の染色には用いないため、こちらの選択肢が正解となります。

5.PTAH染色
フィブリン(線維素)やフィブリノイド(類線維素)の証明を目的とした染色法です。
染色結果
線維素、類線維素、神経膠線維、横紋筋の横紋、平滑筋、核―青紫色
膠原線維、神経細胞、軸索―赤褐色

午前(AM) 問59

基準範囲に性差を認める血算項目はどれか。2つ選べ。
1.赤血球数(RBC)
2.網赤血球比率(Ret)
3.平均赤血球容積(MCV)
4.ヘモグロビン濃度(Hb)
5.平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)

答えはコチラ
1.赤血球数(RBC) 4.ヘモグロビン濃度(Hb)

 

 

解説

1. 赤血球数(RBC)
RBCの基準範囲は性・年齢によって異なります。
以下は静脈血の基準範囲です。

RBC基準範囲

成人男性:435〜555万/μL
成人女性:386〜492万/μL

RBCやHb、Htは貧血や赤血球増加症の有無を知るのに役立ちます。

 

増加:真性赤血球増加症
減少:貧血

ポイント!!

・女性は月経により毎月出血が起こっているため、男性よりも少ない傾向にある。
・新生児はかなり高い値を示すが、生後急速に低下する。
・小児期には成人よりも低い値を示し、男女間に差はない。
・老人も成人よりは低い値を示すことが多く、男女間にあまり差を認めない。

2.網赤血球比率(Ret)
網赤血球とは骨髄で脱核して間もない未熟な赤血球であり、骨髄における赤血球産生能を反映しています。
基準範囲は成人では0.8〜2.2%、新生児では高値(2.5〜6.5%)を示しますが、生後まもなく成人値に近づきます。
男女差はありません。

増加:溶血性貧血など
低下:再生不良性貧血、赤芽球ろうなど

3.平均赤血球容積(MCV)
MCVとは1つの赤血球の容積の平均値を絶対値で表したものです。

計算式:MCV(fL)=〔Ht(%)/RBC(百万/μL)〕×10

基準範囲は83.6〜98.2fLで、男女間に差はありません。

<80:小球性:鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血など
80〜100:正球性:溶血性貧血など
100<:大球性:巨赤芽球性貧血など

ちなみに単位のfLは「フェムト リットル」と呼び10−15 Lを意味します。
単位も国試でよく問われるところなので、しっかり押さえておきましょう。

4.ヘモグロビン濃度(Hb)
Hb濃度の基準範囲は性・年齢によって異なります。以下は静脈血の基準範囲です。

タイトルが入ります。

成人男子:13.7〜16.8 g/dL
成人女子:11.6〜14.8 g/dL

ヘモグロビンは赤血球内に存在するため、赤血球数とほぼ同様の相関を示します。

5.平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)
MCHCとは一定容積の赤血球の中にあるヘモグロビン濃度を表した数で、ヘモグロビンの飽和度を示します。

計算式:MCHC(g/dL)=〔Hb(g/dL)/Ht(%)〕×100

基準範囲は31.7〜35.3 g/dLで男女差はありません。

<30:低色素性:鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血など
30〜35:正色素性:溶血性貧血など

 

項目

男性 女性 増加

減少

 RBC 435万〜555万/μL 386万〜492万/μL 真性赤血球増加症 貧血
Hb 13.7〜16.8g/dL 11.6〜14.8 g/dL
Ht 40.7〜50.1% 35.1〜44.4%
MCV 83.6〜98.2fL 大球性 小球性
MCH 27.5〜33.2 pg
MCHC 31.7〜35.3 g/dL 低色素性
Ret 比率 0.5〜1.5 % 溶血性貧血 再生不良性貧血
絶対数24,000〜84,000 /μL

 

午前(AM) 問60

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断に用いられる抗体はどれか。
1.抗CD4
2.抗CD19
3.抗CD34
4.抗CD45
5.抗CD59

答えはコチラ
5.抗CD59

 

 

解説

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とは夜寝ている間など、補体が活性化しやすい時に血管内溶血が起こる病気です。
PNHでは赤血球膜に存在するGPIアンカーという、補体制御蛋白などのタンパク質を赤血球膜に固定する物質が生合成されないため補体感受性が高まり、アシドーシスや感染症、手術などで補体活性化が起こることにより、血管内溶血を起こします。
この補体制御蛋白がCD55,CD59なのです。
フローサイトメトリーでGPIアンカーの欠損やCD55,CD59の欠損が複数系統の血球に見られればPNHと診断されます。
PNHはよく試験に出題される疾患の一つです。
しっかり覚えておきましょう。

PNHの試験ででるポイント

・早朝の褐色尿(夜間寝ている間に呼吸性アシドーシスとなり、溶血するため)
・正球性正色素性貧血
・CD55,CD59陰性
・Ham試験、砂糖水試験陽性(赤血球の補体感受性を調べる検査)
・赤血球膜アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性低下(GPIアンカーはAchEも赤血球膜に固定している)
・NAPスコア低下(NAPとは好中球に含まれるALPのこと。GPIアンカーはALPを好中球膜に固定させている)

 

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