臨床検査技師国家試験の第67回を解説します【午前(AM) 問16~問20】
カリスマ検査技師K

こんにちは!
病院で働く現役の臨床検査技師『けいた』と申します。

午前(AM) 問16

成人の心電図で異常値はどれか。
1.P波幅 0.10秒
2.PR時間 0.18秒
3.QRS幅 0.20秒
4.QTc 0.40秒
5.電気軸 60度

答えはコチラ
3.QRS幅 0.20秒

 

 

解説

1マスが0.04秒であることを覚え、正常値の秒数と一緒にマス数も覚えると頭に入りやすいですよ。

【正常値】
心拍数:60〜100回/分
PQ間隔:0.12〜0.20秒(3〜5マス)
QRS幅:0.12秒以下(3マス以下)
QT時間:補正QT間隔(QTc)が0.36〜0.44秒
電気軸:−30〜+110°
移行帯:V3〜V4


神戸市医療センター 臨床検査技術部 検査タイムズ”TEKARI”より引用
http://chuo.kcho.jp/original/clinicallabo/lab-news-backnumber24.html

「3.QRS幅0.20秒」はマス数で考えると5マスであり、明らかに延長していることがわかると思います。
QRS幅の延長は脚ブロック、心室内伝導障害、心室性期外収縮、薬物効果、重度の高カリウム血症などでみられます。

午前(AM) 問17

心電図を別に示す。正しいのはどれか。
1.右胸心
2.右軸偏位
3.側壁梗塞
4.胸部電極の付け間違い
5.四肢電極の付け間違い

答えはコチラ
5.四肢電極の付け間違え

 

 

解説

正常洞調律ではⅠ、Ⅱ、aVF誘導ではP波は陽性になりますが、図を見てみるとⅠ誘導でP波が陰性化していることがわかります。
この様な場合、電極の左右の付け間違えや右胸心などを考えます。

1.右胸心
Ⅰ誘導が上下逆転し、ⅡとⅢ、aVRとaVLが入れ替わった形となります。
胸部誘導ではV3からV6にかけてQRSの電位が小さくなり、R<Sとなっていきます。
図ではⅠ誘導が上下逆転し、ⅡとⅢ、aVRとaVLが入れ替わった形となっていますが、胸部誘導で、右胸心の形をとっていません。

2.右軸偏位
Ⅰ誘導のQRS波が陰性化しているため、右軸偏位も考えられそうです。
しかし、右軸偏位をきたす右室肥大ではV1のR波の増高、V5、V6での深いS波、幅広いQRS波などが見られますが、そのような変化は図から読み取れません。

3.側壁梗塞
側壁で梗塞が起こると、Ⅰ、aVL、V5、V6でST上昇、異常Q波、冠性T波などが見られます。

4.胸部電極の付け間違い
胸部電極を付け間違えると移行帯が確認できなくなります。
図から移行帯はV3〜V4であることが推測されます。

5.四肢電極の付け間違い
四肢電極を付け間違えると右胸心の型の心電図となります。g
つまり、Ⅰ誘導は上下が逆転し、ⅡとⅢ、aVRとaVLが入れ替わった形となります。
しかし、胸部誘導は正常型を示します。
図の説明と合致しているため、この選択肢を選びます。
臨床現場でも、稀に付け間違いをしている心電図波形に遭遇することがあります。
高度な右軸変位様の波形をみたら「ん?」とすぐに気付けるようになると良いかもしれません。

午前(AM) 問17

トレッドミル負荷試験について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.不安定狭心症は禁忌である。
2.目標心拍数は体重で決める。
3.誘導方法はCM5誘導を用いる。
4.運動誘発性不整脈の診断に用いられる。
5.Bruce法では1分ごとに負荷量を増大させる。

答えはコチラ
1.不安定狭心症は禁忌である。 4.運動誘発性不整脈の診断に用いられる。

 

 

解説

【トレッドミル運動負荷試験】

自動で動くベルトの上を歩行しながら心電図を測定する方法で、負荷を徐々に上げていくことができます。

メディカルオンラインより引用
https://dev.medicalonline.jp/index/product/eid/67873

1.不安定狭心症は禁忌である。
運動負荷試験の禁忌は国試に頻出です。しっかり覚えておきましょう。

2.目標心拍数は年齢で決める。
目標心拍数は年齢別予測最大心拍数の85%以上で、この心拍数に到達すると運動負荷試験を中止します。
年齢予測最大心拍数とは「220―年齢」から求めることができます。

3.誘導方法はManson-Likar誘導法(ML誘導法)を用いる。
ML誘導法とは標準12誘導の電極位置の中で、四肢誘導の電極位置を鎖骨や腸骨に変更した誘導法です。
これにより四肢を動かしたときの心電図への影響を少なくすることができると言われ、運動負荷心電図検査や、ホルター心電図検査で12誘導心電図を記録するときなど、四肢を動かしながら心電図を記録する際に採用されています。

日本光電より引用
https://www.nihonkohden.co.jp/iryo/point/holter_ml/gaiyo.html

4.運動誘発性不整脈の診断に用いられる。
運動負荷試験を行う目的は、
虚血性心疾患の診断
運動耐容能の測定
運動により誘発される不整脈の検出
などです。

5.Bruce法では3分ごとに負荷量を増大させる。
Bruce法では3分ごとに速度と斜度が上がります

徳島西医師会より引用
http://tokushima-nishi.com/tyousa/10.html

午前(AM) 問19

傍胸骨長軸カラードプラ像を別に示す。
この症例で聴取される可能性が最も高い心雑音はどれか。
1.機能性雑音
2.連続性雑音
3.拡張早期雑音
4.全収縮期雑音
5.駆出性収縮期雑音



答えはコチラ
3.拡張早期雑音

 

 

解説

カラードプラ像から、どのような疾患が考えられるか見てみましょう。
まず、1番下の心電図を確認するとP波の直後に赤い印があることから、拡張末期の像であるとわかります。
正常の拡張末期では僧帽弁は開放、大動脈弁は閉鎖しています。
しかし、この像から大動脈弁が少し開いていて、血流が逆流してしまっていることがわかります。
このように拡張期に大動脈から左室への逆流を示すモザイクパターンを認めるのは、大動脈弁閉鎖不全症の特徴の一つです。

大動脈弁閉鎖不全症の場合に見られる特徴的な心雑音

拡張早期雑音
大動脈弁の閉鎖不全により大動脈の血液が左室へ逆流し、拡張期に雑音を生じます。
左室に血液が充満していくにつれ、逆流量は減るため、漸減性の雑音となります。
したがって3 拡張早期雑音が答えとなります。
ちなみに、大動脈弁閉鎖不全症が重症化してくると収縮期駆出性雑音もみられるようになります。

これは逆流により左室の容量が増大し、収縮期に左室から出ていく血液量も増えるため、相対的な大動脈弁狭窄状態となることにより生じます。
その他の選択肢も軽くみていきましょう。お

1 機能性雑音
心臓に明らかな異常がない場合にみられる心雑音です。学童期によくみられます。
2 連続性雑音
収縮期から拡張期を通じて続く漸減漸増の心雑音です。動脈管開存などで見られます。
4 全収縮期雑音
Ⅰ音からⅡ音まで連続し、音量はほぼ一定の心雑音です。僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症心室中隔欠損症などで見られます。
5 駆出性収縮期雑音
Ⅰ音から離れて始まり音量は漸増し、収縮中期に最大となり、その後、漸減する心雑音です。大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、閉塞性肥大型心筋症、心房中隔欠損症で見られます。

出典:「医学生学習支援プラットホーム みんコレ!」
https://minkore.com/bbs_detail/2448

午前(AM) 問20

ボイル・シャルルの法則の記載で正しいのはどれか。
ただし、気体の体積、圧力、絶対温度をそれぞれV、P、Tとし、定数をRとする。
1.P・T/V=R
2.P・V/T=R
3.R・P/T=V
4.R・V/P=T
5.T・V/P=R

答えはコチラ
2.P・V/T=R

 

 

解説

ボイル・シャルルの法則とは?

ボイルの法則
「一定温度で、一定量の気体の体積Vは圧力Pに反比例する」
シャルルの法則
「一定圧力で、一定量の気体の体積Vは絶対温度Tに比例する」

この二つの法則を合わせたものです。
つまり
「一定量の気体の体積Vは圧力Pに反比例し、絶対温度Tに比例する」

この法則に当てはまっているのは
2のP・V/T=Rのみです。
法則の主語であるVを左側においた式に直してみるとわかりやすいでしょう。
P・V/T=R
V=R・T/P ですね。

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